第2回 「どう使われる、
アンケート!?」
登場人物は想像上の存在です。類似する実在の人物への誹謗中傷等はお止めくださいますようお願い申し上げます。
- ミタ:
- コモリさんコモリさん、委員長はいつ焼肉おごってくれるんですかね?
- コモリ:
- なんでおごってくれる前提? だがわかる、人の金で食う肉ほどうまいものはない。
- ミタ:
- ですよね。コモリさんも話分かるなあ。
- コモリ:
- おう、おれはコモリ。話の分かる男…。だが大事なことを教えてやろう。委員長はお小遣い制だ。お前におごっている場合じゃない。むしろ独身貴族のお前こそわれらお小遣い族におごるべきだ。
- ミタ:
- あ、コモリさんもお小遣い制なんですね。
- コモリ:
- そらそうよ。
- ミタ:
- ちなみにいくらなんですか?
- コモリ:
- 去年妻との厳しい交渉で5,000 円のベースアップを勝ち取ったことで到達水準を超えて目標水準に一歩近づいたな、って仕事中に何の話やねん。暇か。
- ミタ:
- 組合活動は仕事じゃないって聞いたんですけどぉ~。
- ミッツ:
- アンタ馬鹿ぁ!? 中央執行委員なら、組合欠勤中は組合活動が仕事みたいなもんでしょ! 今日は組合員アンケートの分析、さっさとやるわよ。
- ミタ:
- ワオ、出た!
- ミッツ:
- なんか文句あんの? あん?
- ミタ:
- いえ、ございません。さあやりましょう。仕事って楽しいなあ!
- コモリ:
- ( これがいわゆる「アットホームな職場」ってやつか…)
- ミッツ:
- アンケート、回収率96%って、今年も随分集まったわね。
- コモリ:
- そうですね、それだけ、組合員の皆さんに興味を持ってもらっているということですから、しっかり分析して活かしていきたいですね。
- ミタ:
- いやー、でもアンケート答えるの、正直結構大変ですよね。本部でも集計と分析もなんかすごい大変だし、誰がこんなめんどくさいこと始めたんだろう。責任者出てこい!
- ヤマシタ:
- 責任者は私だが?
- ミタ:
- うお!? 中にはそんな人もいたりして!あくまで中には!ダイバーシティですからね、ダイバーシティ。
- ミッツ:
- まったく。アンタ、教えてやんなさいよ。
- コモリ:
- しょうがないな。
アンケート調査、はじまりの歴史
- ミタ:
- いやー、外は気持ちいいなあ。それで、何の話でしたっけ?
- コモリ:
- アンケートだろ。もともと、このアンケートをやることになったきっかけは、2017 年10 月に会社を挙げて「働き方改革」が開始されたことだ。
- ミタ:
- 会社の働き方改革と何の関係があるんですか?
- コモリ:
- 働き方改革を会社が掲げて、会社として実行してきたことに対して、実際に現場で働いている組合員がどう考えるか、効果が出ているといえるのか、PDCA サイクルの「C」(= Check)の部分はとても大事だ。それを客観的に、また忖度なしでできるのは会社じゃなくて組合。「会社、最近ちょっと変わったな」なのか、「掛け声だけでなんも変わってないやん」なのか、会社の上司には「働き方改革、イイ感じッス!」としか言えない人もいるだろうからね。
- ミタ:
- 確かになあ、自分、長い物には巻かれたい派なんで、いざ上司に聞かれたら「イイ感じッス!マジ最高ッス!」って言っちゃいますね。
- コモリ:
- その割には私に対する態度がおかしい気がするが…。とにかく、こういった施策はコストダウンや販売促進と違って、「意識」とか「雰囲気」の変化、という客観的な数字には表れにくいものでもあるから、よりこういったアンケートは大事になってくる。
- ミタ:
- でも、働き方改革っていえば、「所定外労働時間が減る」とか「年休取得日数が増える」というのは数字で出るし、成果としてわかりやすくないですか?
- コモリ:
- 客観的な指標としてわかりやすいのは確かだね。でも問題は、「本当にその数字が正しいか」ということ。所定外労働時間については、過小申告する、あるいはせざるを得ない人がいる、というのはミタくんもわかるだろ?
- ミタ:
- それはそうですね…。正直サービス残業ってありますよね。「40 時間の壁」っていうか、36 協定違反したらいけないし。
- コモリ:
- 電通での労災事件から随分風向きが変わったけど、それまでは「月〇時間以上は付けたらダメ」とか、「年休取って出社してる」とか、当社に限らずよく聞いていた。
- ミタ:
- オレが会社入ったころですね。電通の事件。そういう状況から、上から「時間外減らせ!」って言われて所定外労働時間の数字だけが減っても意味がないし、むしろ「減らさなきゃ」ってサービス残業することになるかもしれないですね。
- コモリ:
- その通り。まず正しい実態が数字に表れること、それと同時に業務そのものが効率化され、「付き合い残業」みたいなものも減っていくことが必要なこと。ミタくんが言ったような、上からの圧力でよりサービス残業が増えたりしていないか、ということや、ただ「減らせ」ってだけの丸投げになっていないか、ということをアンケートではチェックしてきたし、これからも確認しないといけない。ある意味、健康診断みたいなものだね。
- ミタ:
- なるほど。でも、そしたら毎回同じことを聞くんですか?定点観測しないと違いはわからないですよね?
- コモリ:
- 地味に鋭いな。アンケートは、サービス残業の有無や働き方改革についての定点観測をベースにしているのは確かだ。ただ、それ以外にその時々に応じたトピックスも組み込んでいる。今回でいえば、「人事評価制度がちゃんと機能しているか」や「女性や高齢者に優しい職場かどうか」といったテーマがそれだ。
- ミタ:
- へえ。本部も意外に考えてるんですね。
- コモリ:
- ( …いつか東京湾の藻屑にしたるわ)。
さて、今年のアンケート結果は…?
- ヤマシタ:
- 今年でこのアンケートも4回目か。少し傾向も見えてくる頃かな?
- コモリ:
- これまで支部・会社別でこのアンケートは分析してきましたが、今回から「職種」という観点も加えてみました。
- ミッツ:
- 職種ね。確かに、営業マンと製造オペレーターじゃ全然状況が違うわよね。
- コモリ:
- その通りです。例えば、「正確に所定外労働時間を勤務表に反映できているか」という設問での「いいえ」回答、つまり「サービス残業がある」と答えた割合は、全社で8.9%と3年前から右肩下がりです。しかし、その中では営業系と生産技術系が18%を超えて高い。特に、フーズ生産技術系は33%と突出していて、つけられていない時間も「20 時間以上」が多数です。
- ミタ:
- 正直、営業系は想定していましたが、生産技術系もかなり高いんですね。
- ミッツ:
- どんだけ~。製粉でも確かに工場の設備・品管担当は長時間労働が課題よね。
- ミタ:
- ですよね~。
- コモリ:
- いかにも~。
- ミタ:
- ちょっとアンタ真面目にやんなさいよ。
- ミッツ:
- えっ? 私だけ? え?
- ミタ:
- 「 働き方改革前より労働時間を付けやすくなったか」に「以前から変わらない」っていう人が51.3%って結構いますね。もともと付けられているから変わらないのか、付けられない状況が変わらないのか、どっちなんでしょうね?
- コモリ:
- …悔しいが、いいポイントだ。実際に見てみると、「以前から変わらない」と回答した人のうち、「サービス残業がある」と答えた人の割合は全体とほぼ同じ8.7%。その8.7%の中で、「上司から時間を調整するように指示される」人は20%と全体よりもかなり多い。仕事の充実度も全体と比べて低く、「職場で業務改革が行われていない」と回答した人の割合も高い。
- ミッツ:
- こういうのは特定の職場の問題なのかしら。
- ヤマシタ:
- 属性を見てみると、幅広い年代、会社、職種、そして支部にわたっていて、そういう職場がまだ全国に散在しているということかもしれないね。このあたりは、支部と連携して取り組んでいくべき事柄になりそうだね。
- コモリ:
- 業務改革についても、職種で差があります。この1年で業務改革が前進したと回答した割合は、他が5割台の中でエンジニアリング系、研究開発系、営業系が7割を超えました。
- ミッツ:
- コロナのおかげ、って側面もありそうだけど、職種的に、在宅勤務ができるようになったから、というわけではなさそうよね。
- コモリ:
- Teams などIT ツールやWEB 会議の普及ではないでしょうか。わざわざ会議のためだけに出張先から戻ったり、出張したり、が減ったとすれば生産性の向上にはつながりますよね。
- ヤマシタ:
- 我々組合も、この1年良くも悪くも変化があったよね。中央執行委員会で紙を1枚も印刷しなくなったし。
- ミッツ:
- 移動時間の負担は減ったし、ペーパーレスでいい面もあるけど、膝つき合わせて語る、みたいなものもときには必要よね~。
- コモリ:
- 人事評価の納得度については今回初めてアンケートしました。約75%の人が「納得感がある」と回答しています。
- ミタ:
- 全体的に研究開発系の納得度が高いですね。上司とのコミュニケーションが取れている、と感じている人が9割!
- コモリ:
- 「 納得感がない」と回答した人は、「目標の達成度合い」や「評価結果」に対して具体的な話し合いがなされないということについて不満がある、ということがわかります。自由記述欄を見ていても、「良い評価は今期の成果ではなく順番でついている」「自分が頑張った/できなかった実感と実際の評定が一致しない」という趣旨のコメントが目立ちます。
- ミタ:
- 確かに、どうやったら高い評定をとれるのか、自分の今期の成果に何が足りないか、とかがあいまいだとどうしたらいいかわかんないですよね。
- ミッツ:
- 女性・高年齢者の働く環境も各社・職種それぞれって感じねえ。
- コモリ:
- 「 女性の働きやすさ」については、今の職場が女性にとって「働きやすい」「どちらかといえば働きやすい」と答えた人が全体の54.2%。女性の回答に限定すると、67.6%と全体よりは高いですね。工場系支部がやはり低めに出ていますね。今年も女性の新入社員が工場配属されていますので、改善していく必要がありそうです。
- ミッツ:
- 50歳以上の高年齢者のデータを見ると、おおむね全体と同じ傾向みたいね。特徴的なのは「字が細かい」「ITに不慣れ」といったコメントが高年齢者からは出ているところね。
- ヤマシタ:
- それは私たちもわかりますよね。ミタくんなんかは若いからいいだろうけど。
- ミタ:
- そんなことないッスよ~。もう30 歳ですから。オッサンですよオッサン。
- ヤマシタ:
- 君がオッサンなら私はなんなんだ?おじいちゃんか?私をおじいちゃんだと言っているのか?!
- ミタ:
- 滅相もございません!はい!
それで、この後どうするの?
- ミタ:
- いやーそれにしてもアンケートの結果、興味深いですね…。
- コモリ:
- 確かに「生の声」でもあるし、これだけの回答率のアンケートは他労組でもなかなかないからね。今回、初めてWEB アンケートもやったけど、支部によっては効率化につなげることもできたんじゃないかな。
- ミタ:
- 正直、自分は紙で書くのめんどくさかったんで、今回は通勤中にスマホでできたのは楽でしたね。それでもめんどくさいのはめんどくさいですけどね。いやー、にしても分析大変だったけど終わった、終わった。第二部・完!
- ミッツ:
- 勝手に試合終了してんじゃないわよ。アンケートに限らず、情報というのは集めるだけでは意味がないわけ。会社とは労使協議会や事務局での打合せの場を通じて、労働環境の改善を訴えていくことになるわけだけど、会社は勤務表のデータや、普段の上司・部下の会話からしか、実態を見て取ることができないわけよ。そこで、こういった「生の声」であり、具体的な数字を出すことができれば、改善策を労使で考えて実行していくことができる。これを、本部と経営、各支部と事業場でそれぞれやっていくことで効果が出てくる。あー、年取ると一気にしゃべるのつらいわ。
- コモリ:
- お疲れ様です。具体的にはグループ中央協議会や、各社別労使協議会で本部としては話をしていくことになる。支部でも、工場協議会や労使協議会の場で、データやコメントから会社に対して改善要望や、提案をしていってもらうことができると考えている。昨年は労使協議会などの会議体が実施できず、夏に会社・組合とも少数での意見交換を行った。会社が行っている働き方改革の進捗と合わせて、アンケート結果を共有している。これによって制度や仕組みが大幅に変化した、ということではないけれども、会社としてもまだまだサービス残業があるという実態については、正確に把握するには組合のアンケートしかない。「意識」を変えるのはどうしても時間がかかるが、管理者への啓蒙活動など、地道に労使で取り組んでいくことができているとは思っている。結果として、まだまだではあるが少しずつ残業はちゃんとつける、という意識が以前より出てきていることがアンケートからは読み取れるよね。今回、特徴がみられた職種や会社については、よりピンポイントな対応策を会社とも協議していかなければいけない。
- ミタ:
- …コモリさん、終わりでいいですか? ふぁ~。
- ミッツ:
- 眠気に耐えてよく頑張った! 感動した!!
- ヤマシタ:
- 人事評価とか多様な働き方の面でも、偉い人が「知る」「気づく」ということが会社を動かすことに繋がるってことでもあるね。自分たち自身でも、気づくこともあるし、「目標」「道標」にもなる。アンケートについては、全組合員の協力でとても大きな価値を持つものにできていることを忘れず、本部・支部ともに有効活用していかなければいけないね。
- ミタ:
- はい委員長、了解いたしました!
- コモリ:
- うわっ、私の扱い、雑すぎ…!?
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