THE SUNOTRY UN!ON×日清製粉労働組合
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大変革の時代に労働組合は
どう変わり、
どう変わらない
でいるべきか
本部が「仲間」から「事務局」に
なってしまっているという危機感がある
- 松本:
- 今日はありがとうございます。日清製粉労働組合は、機関誌の日清製粉労働組合時報の愛称を新たに公募し、この号から新愛称の「むぎこむ」として発行していきます。記念すべき第一号のメイン企画は「変化」を大きなテーマとして、今回の対談をTHE SUNTORY UN!ONさんにお願いしました。会社としてもサントリーさんは率先して時代の先頭に立っているという印象もあり、労働組合としてもサントリー労働組合からTHE SUNTORY UN!ONへの大きな変化があったということで、いろいろお話をお聞きできればと思っています。どうぞよろしくお願いします。
東海林・
- 堀口・山田:
- よろしくお願いします。
- 松本:
- いま、コロナ禍で社会がどんどん変わっていっていて、僕ら労働組合も否応なく変化を余儀なくされていますよね。その中でさらに変わらなきゃいけない点、一方で変えるべきじゃない点はなんでしょうか。実際、今まで全部集まってやっていたことがWebになって、これからコロナが収束したときに、どれぐらいWebを継続するか、または元に戻してみんなで喋るのか、ということは大きな悩みです。サントリーさんの中では、まずこの1年ぐらいの間で、自分たちの意志とは別なところで変わってしまったなって思ってることはなんでしょう。
- 堀口:
- 会議の方法はもうおっしゃる通りで、今までのようにFace to Faceでドンチャンして結束深めてっていうことができなくなった。あと説明会ですね。支部訪問して直接説明ではなく、Webでオンライン合同説明会になってしまった。ただデメリットだけじゃなくて、今までFace to Faceで参加できなかった方、ちょっと時間はなかった、っていう方も参加してもらえるようになったりしたことはメリットですね。
- 松本:
- そうですね。それはうちもありました。
- 小森:
- 同じ状況ですよね。やっぱり大規模な集合会議はできない。
- 東海林:
- 定期大会もWebですか?
- 小森:
- 今回はじめてWebにしました。前回は少人数でやりましたね。当日出席しない人には書面表決書を提出してもらって。
- 東海林:
- あそこ? 晴海のいつもの会場に?
- 小森:
- 晴海ではないんですが、同じフクラシアさんの系列の東京駅近くの会場で行いました。ただそのあと、フクラシア晴海さんは閉館してしまいまして。
- 東海林:
- マジっすか。一度、堀口さんも一緒に、働き方改革の話でお伺いしましたよね。
- 小森:
- そうですね。2年前の支部代表者会議ですね。サントリーさんの働き方改革の取り組みを話してもらった。
- 東海林:
- 1~2時間お話したんですよね。最後ホテルで宴会して。楽しかったです。
- 松本:
- 私、そのときは支部長として参加してましたね。ありがとうございました。
- 東海林:
- そのときから考えると、やっぱりガラっと変わったのは会議もそうだし、こういう交流もそうですよね。僕らも交流の機会をいかに作るか、ということについては労使で議論してるんですよ。WebとFace to Faceって全然違うよねっていうのは、ここ1年半~2年ぐらいですごくわかってきたので。でも、多分全部Face to Faceには戻らないから、そこはじゃあ変えていかなきゃいけないよねって。変えるのは僕らの意識なのか、仕事の仕方なのか、組合活動の進め方なのか、もしかしたら全部かもしれないですけど。話戻りますけど、本部からの説明会を全部Webでやってて、いいところもあるんですけど、組合員から見たときに、Web上でしゃべっている本部って、なんていうか「事務局」みたいに見えてるんじゃないか。汗かいてる感は多分あんまり伝わってなくて、どう思われてるのかなっていうのはすごい心配ですね。
- 山下:
- そうですよね。支部訪問とかで、カメラオフの人が多い支部もあって、はじめましての人も結構いるんだけど、顔が見えないから誰が誰か全くわからなくて、そのときはやっぱりWebつらいって思いましたね。で一方カメラオンにしちゃうと、通信が重くなっちゃうじゃないですか。全然動かなくなったりして。やっぱりそういう弊害はあるなって思いますね。
- 東海林:
- 僕らは、中執が全員専従で11人いて、中央執行委員会は週2でやってるんですよ。頻度も多いし、はじめ会議はカメラオフでやってました。最初はもともと顔を知ってるし、関係性もあったので、オフした方がなんか気も楽やし、なんとなく大丈夫だねって思ってたんですよね。でもだんだん発言するタイミングがわからなくなったり、お互いの気持ちの通じるところが少しずつ薄くなってきた。なんか、あの人がどう考えてるかちょっとわかんなくなってきたな、みたいな。そこで一旦カメラをオンにしてみて、やっぱ顔見えた方がいいねって感じにはなりましたね。週1はみんなで集まりたい、って話もありますけど、緊急事態宣言になっちゃうとできない。本当に試行錯誤をいろいろ繰り返していて、正解がちょっとわからない状態にはなっています。
- 小森:
- わかりますね。Web会議で説明していると、相手の顔が見えない、みんなの顔が見えないのがやりにくいですね。
- 東海林:
- THE SUNTORY UN!ONには、支部活動をフォローする支部統括局というのと、会社・対外窓口とか人事制度改定窓口をしている総合政策局という2つの局があるんですね。山田が副委員長で総合政策局長なので、人事制度改定の進捗なんかは、山田が中心になって総合政策局がやってるんですけど、山田は実際に支部に行って説明したことはあるんだっけ?
- 山田:
- あります。最初の2回ですかね。私は2019年の10月に本部に来て、その11月と次の2月の説明会までギリギリ行けました。直接行くと、身振り手振りや顔の表情が出るじゃないですか。本部もここはちょっと苦しいと思ってるんですけど、みたいなのも伝わるし、みんなも「あーなんかわかるな」なのか、「えーっ?」なのか、っていうのが感覚でつかめてたのが、いまは1対200とか300に向けて50分ぐらい一方的に話してしまうので、詰め込んでる感はすごくあります。その後にFormsのアンケート機能を使って説明会についての意見くださいってやると、手書きのアンケートのときよりきつい言葉が増えていたりして、「自分たちの仲間として議論する相手」というよりも、「ただ説明している人」って思われているんじゃないかって感じるときはありますね。
- 東海林:
- 「仲間なんだ」って感じとか、「皆さん苦しいし僕らも苦しい、けど皆さんも頑張ってる、僕らも頑張ってる」みたいなことを一緒に感じられるような工夫をしていかなきゃいけない、っていうのは多分本部の人は全員感じています。組合員側も「組合ってもうちょっと一体感なかったかな」と思っている人もいると思う。
- 小森:
- 全く同じだと思います。特に、工場の人たちって今も在宅勤務できず毎日出社していて、営業所、本社、研究所なんかはむしろ原則在宅勤務している。「一体感が薄れるんじゃないか、このままじゃよくないんじゃないか」というような意見は、少なからずありますね。
年休取得には「仕組み」と「風土」による心理的安全性が必要
- 東海林:
- 今回機関誌を変えると。名前を変えて、見せ方も含めていろんな変化を起こしていけば何か変わるんじゃないか、みたいな思いがあるんですか。
- 小森:
- そうですね。機関誌はすべてじゃないですが、きっかけにしたいなと思います。考案した方の考えなんですけど、「むぎこむ」っていうタイトルは、「こむぎこ」に使われている文字だけで構成されているっていう、ちょっとおしゃれな感じなんですよ。ある意味労働組合らしくなくていいですよね(笑)
むぎのコミュニティでコミュニケーションを円滑にみたいな思いも込められていて。まさに仲間、共同体としてみんなでやっていこうということが考えられているすごいいい名前なんですよね。
- 山田:
- おしゃれ。かわいいですね。
- 東海林:
- それ、本部で考えたんですか?
- 松本:
- いや、公募です。結構若手の方からの応募作品ですね。
- 東海林:
- 日清製粉さんは、この機関誌以外では、なにか変えていく活動や体制ってありますか?
- 小森:
- いろいろやってますね。テクニカルな面ですけど、まずIT化をしっかりやっていこうと。紙ベースですべてやってきたところを、無駄な「作業」を減らして、コミュニケーションを大事にしていこう、という思いで切り替えてきました。
それから、これはコロナ前からですが、中期ビジョンをしっかり作ろうということで、ビジョン策定委員会を本部と支部含めて8名で構成して、新しい志、ありたい姿を決めました。サントリーさんから丸パクリさせていただいた(笑)、ナイスアクション大賞でも、組合員を巻き込んでいくことに加えて、ビジョン実現に向けて、という目的を付与しました。各支部では、本部の想定より色々やっていただいたと思ってます。
例えば活動の柱の中で、労働時間の実態記録をしっかりやろうという取り組みがあります。ある支部では、2年ぐらい前まで4人に1人は実態通りつけていないと答えていたのが、上司とも相当話し合って現場で改善していった結果、実態通りでない人が0になった。本当に素晴らしいと思います。
- 東海林:
- 本部というよりも支部がやっぱり盛り上がりますよね。組合活動は。
- 小森:
- そうですね。本部だけじゃダメですね。
- 東海林:
- 本部はどっしり構えて本質的なところだったり、本当にトップとしっかり意見交換する、みたいな役割です。それも大事だけど、組合が盛り上がってる、組合が活動してるなっていうのは、支部がいかにいろんなことをやってくれるか、かなと思います。僕らはナイスアクション大賞をサントリー労組時代から10年近いぐらいの期間やっていて、「よりよく働く」「よりよく暮らす」「よりよく学ぶ」っていう組合全体の活動の三本柱+それを支える基盤の4つに分けて、それぞれでアクションを表彰しています。支部もすごい工夫をして活動してくれていて、このコロナ禍の中で、今までなかった発想で、例えば「地域社会と繋がりをこういうふうに作ります」とか、工場で「食堂の方々が困ってるよね」とか、「農家の方が困ってるから」とか、フードロスの観点も結びつけてたりしていて、どんどん支部活動が進化している。大賞とか賞を選考するとき結構迷いますね。
- 山下:
- 我々も相当迷いましたね。優劣つけられないけどつけないといけない。
- 小森:
- それから、僕らはベースアップと一時金の取り組みをやっぱり中心にやっていて、実はそれ以外の労働条件向上の交渉はかれこれ10年ぐらいやっていない。世間動向とか、いろんな支部からのニーズの中身をしっかり踏まえながら、2022春闘では、複数項目掲げようということで、具体化を進めています。
- 東海林:
- このコロナ禍で休むこととか働くことに対する不安が変わってきてると思う。今までの人事制度で対応できてればいいでしょうけど。
- 小森:
- 支部からの要望を踏まえて「病気休暇」について議論をしたときに、感染症のせいで年休が取得しづらくなる、という声もあって。サントリーさんは年休取得促進は進んでいるんですか。
- 東海林:
- 年休については、サントリーは昨年の一人当たり取得日数が17日超えてるんですよね。本当に働き方改革とか取り組みが奏功してきている。じゃあその先は、の議論をしているんですけど、このあたりは会社とスタンスが違うところですね。僕らは100%取得することが競争力になるし、それを目指すべきだと。でも会社は、取るか取らないかは労働者の権利だからそこまでは、という感じで。
- 小森:
- 我々のほうは平均すると年間15日ぐらい取れているというデータなんですが、人によってかなりばらつきがあって、最低5日しか取れていない人とかまだまだいます。
- 山下:
- 私なんかもともと工場の人間なので、年休は当たり前のように取る文化があったんですね。でも、松本とか小森とか総合職系って取るのが全然当たり前じゃないっていう意識があって。ここの差が非常に大きくて、ここを変えていかないと、新しい休暇を作ろうとしても、「年休も取れてないのに」とか「なんのためにそれいるの」みたいな話になっていっちゃう。
- 小森:
- 総労働時間の削減に向けて、残業を減らすっていうのも大事なんですけど、年休取得を増やすことをまずやっていくのがみんなにとっていいんじゃないかと思っています。まず労働時間を実態通りつけてもらうのを最優先として、そのうえで年休取得率向上の取り組みをやっていきたい。時間単位年休も数年前に入れているんですけど、まだまだ1人当たり平均でいうと5~6時間ですかね、年に。完全に使っている人ってそこまでいなくて。
- 山田:
- へ~。私はなんなら使い切っちゃったぐらい使ってますけどね(笑)
- 小森:
- 便利ですよね。中抜けも出来ますし。
- 東海林:
- もともとの年休の趣旨として1日単位で取るべきっていうのはわかるんですけど、時間単位年休は今の働き方とか価値観にも合ってる気がするんですよね。やっぱり、自由に労働時間を選ぶという考えにシフトして、この日はこういう働き方するんだっていうときに、すごくフィットしてると思う。
- 松本:
- 年休取得促進を今年やっていこうっていう話をしているんですけど、小森さんに「年休取得促進に向けた何かを考えておいてね」って言われたものの、これだ!っていう妙案がなくて困っていて(笑) 特効薬はないんでしょうけど、時間単位年休はこういうことでも使えるよ、みたいな制度理解や、上司の時季変更権の正しい理解を進めていくということかなと思っているんですけどね。
- 東海林:
- 僕らの場合は、労使で作ってる労働時間ハンドブックっていうのがあって、イントラで常に見れるようになってます。例えばこういうときって代休って取っていいのか、とか、こんな場合は労働時間どう勤務表ににつけるのか、とかっていうのも結構細かく書いてる中に、「時間年休の使い方」という項目があって、「中抜けで病院に行く」とか本当にあるようなパターンを載せてます。
- 小森:
- うちも会社が疑義解釈集を作っていて便利なんですが、ただその存在を知っている人ってどれぐらいいるのかなって。こういうのがあるっていうのを伝えるのも大事なのかなと思います。
- 松本:
- 疑義解釈集、昔自分が作ったものなのでなんか責任感じますね・・・(笑)
- 東海林:
- 日清製粉さんもそうだと思うんですが、サントリーもお盆は年休で休むかたちなので、夏に5日間連続で取りましょうっていうキャンペーンを以前やってたんです。でも、夏休みはいろんなところが混むから別のところで取りたいっていう人もいるし、夏にやんなくてもいいんじゃないかって、3年前ぐらいから「夏に」っていうのを外して、どこかで5日間取ってリフレッシュなり、1週間休めなきゃできないことをやりましょう、っていう打ち出し方をしてます。働き方・価値観みたいなところにあわせて、変えてきた部分っていうのはあるな、年休1つ取っても。
- 小森:
- そういうのもいいかもしれないですね。年休の本来の趣旨ってそういうことですもんね。
- 山田:
- うちの横浜支部では、5日間のキャンペーンに加えて、もっと年休取得日数上げるのにどうしたらいいかっていうことを支部の中で考えてくれて、夏休みの5日間とは別に3日間連続で取る日をもう1個作ろう、っていうのを始めたんですね。ヨーロッパの「サバティカル休暇」制度をモチーフにしていて、ヨーロッパでは2週間とか3週間とか長い休暇なんですけど、さすがに無理なので、3日間。ただ横浜支店って営業所なので、夏休みだとお得意先様もお休みなことが多いので取りやすいけど、そうじゃないところで3日間ってやっぱすごくハードル高い。それで、あらかじめルールを決めようということになった。ペア制にして、メールは全部ペアに行くように、とか電話の転送も設定して。案件もレベル分けして、こういう案件はペアの人が対応する、こういう案件は課長が対応する、ここまでの緊急レベルのときだけ本人に連絡する、みたいにちゃんとレベル分けをして、心理的安全性を保って、こういうルールがあるから皆取りましょうっていうのをやったんですよね。組合員だけじゃなくてマネージャーや支店長もみんなでやりましょうってやったのはすごく好評で。これは社長もすごく喜んでいましたよね。
- 小森:
- そう。そのあと全社に展開されて、横浜でこんな取り組みをやっているからぜひみんなやってくれみたいな発信を社長からしてもらいました。
- 山田:
- 取らされ感なく取りましょう、というキャンペーンで、当時の支部委員長が、「子供と野球観戦に行きました」「公園でただただ遊びました」「今日は夜までカラオケに行きました」とか日記のようなかたちで、サバティカルめっちゃよかったですって発信したのもすごく良かったと思います。
- 東海林:
- 横浜は結構若いメンバーが多いので、うちの支店にはこういうのが合うんじゃないかっていうことで、学びの場のために、あるいは目的を持って計画的に、ということを現場から言って、工夫して動かしてきた。うまくいった事例ですね。
- 小森:
- やらされ感ないのがいいですよね。
- 東海林:
- 年休の制度はあるけどそれをどう使うのかを考えるのが大事ですよね。だから何か考えるみたいな、考えさせるみたいなところは大事かもしれないですよね。年休1つとっても。
- 松本:
- さっき、心理的安全性ってワードが出てたと思うんですけど、まさにそれだなと思いますね。自分自身振り返っても、休んだときに何か起きたらめっちゃ怒られるんじゃないか、って思うと休めない。休んでいても、上司が一次対応はしてくれる、とか、本当にやばいときだけは連絡が来る、って思っていられるときは結構気軽に休めたかもしれない。今思えばだけど。
- 小森:
- 組織風土の話だけじゃなくて、山田さんがおっしゃっていたような電話の転送みたいな仕組みづくりってすごい大事だと思いますね。やっぱり営業マンや需給担当者は、年休って言ってもガンガンに電話かかってきて休んだ気にならない、っていう話が往々にしてある。でもいまおっしゃったようにちゃんと仕事を分類して、これは転送で済ませられるよねとか、電話しなくてもいいことだよねとか、そういうような仕組みを作るっていうのはすごく大事だなと。
- 東海林:
- やっぱり仕組みをしっかりして、風土的にも心理的安全性も担保して、その2つが合致するとぐっと進みますよね。
- 山下:
- 職場から風土って作っていくものだと思っていて、取りやすい雰囲気があるところって、やっぱり取れるんですよね。支部長やってた頃の話ですけど、取れてないところって上司が取ってなかったりする。それで、上司と話してみると、「俺、休んでもやることないんだよね。お母ちゃんに邪魔扱いされるんだ。でも、みんな取りたいなら取れって言ってるんだけどね」って言うんですよ。そう言われても部下はやっぱり背中見ちゃうところもあるから率先して取ってくれ、ってお願いしたりとかした。そこの職場職場の雰囲気を取りやすい雰囲気にしていく、風土にしていくために、支部でどう取りやすい雰囲気を作っていくか、話し合いをしていくことが必要かなと思います。
- 東海林:
- 僕らは年間16日をマネージャーもメンバーも全員取るんだっていうのを全社ルールみたいにして、絶対取るんだ、それがサントリアンだ、と。仕組み化して、毎月の支部協議会で全員のリストを出して徹底的にやった。そしたら、風土がどう変わるか、ルール自体がちょっとおかしいのかを検証していきましょう、っていうのを3年間ぐらいやったんですよね。いろんな声が出てきたんですけど、もう16日取るってのは風土として染みついた。結構ガラッとは変わりましたね。ここ何年かで。
組合がキャリア支援をやる時代。会社との差はどこにある?
- 松本:
- この前、宮地さん(ザ・サントリーユニオン前事務局長)が出られていた、「不確実な時代における組合員へのキャリア支援とは」というタイトルの対談を拝見したんですね。日清労組ってずっと賃上げや一時金の話を中心にしてきて、今その次にやろうとしているのが諸要求で、やっぱり労働条件の改善の話。一方で、組合員のキャリア支援っていうことが最近よく言われているなと感じてます。キャリア支援って本来会社がするようなイメージがあって、組合がやる意味って何だろうなとか、組合が会社と違う立場でやれることって何だろうなと。サントリーさんは今どういう感じでやられているんですか?
- 東海林:
- 組合としてってことですよね?
- 松本:
- はい。発想としてなんで出てきたのかなって。日清製粉ではたぶんそういうのを組合に期待している人もいないかなって思ったので、そこを聞きたいなと思って。
- 山田:
- 今まさに総合政策局の中でも本部活動の方針の中に「キャリア自律」という言葉を掲げて、それに対して組合でサポートするよっていう形で進めています。でも会社との違いってどこだろう、というのは本当にやりながらすごく迷ってたところです。サントリーは会社としてもかなりキャリア自律に力を入れているので、会社にいるキャリアコンサルタントとの面談もありますし、1年に1回上司とキャリアについて話す時間もあったり、会社側も大事だよって打ち出してる中で、重なってしまう部分もすごくあったなぁと思います。
会社でもライフプランに沿ったキャリア支援みたいな、大きいキャリア自律に向けての模索は開始されてますけど、それだけでは手の届かない細かいニーズを組合で拾っていく価値があるのかなと思ってますね。
- 松本:
- あえて組合でやらなきゃなって思ったきっかけはなんですか?
- 東海林:
- サントリーには女性社員も多いので、女性のキャリアが経営課題としてあって、会社側は女性社員をマネージャーにしっかり上げていきたい。だから女性社員側もそういうことを考えられるように自分のキャリアを考えなさいよ、そのための研修とか会社はやりますよっていう方向だったんですよね。でも女性でもマネージャーを目指す人もいるけど、もっとキャリアって多様だし、組合員が思っているのはそれだけじゃないよと。私生活含めた人生だし、マネージャーになるだけじゃない活躍の仕方はもっといっぱいあるのにな、じゃあそこを組合がやっていきましょうかっていうのが始まりですね。それって男性も一緒だよねっていうことで、少し広げてきたみたいなところはあるかな。なのでスタートは女性のキャリアってところから考えて、今はかなり幅広くやっていますね。
- 松本:
- 女性っていうのはある意味一番わかりやすいくくりだと思うんですけど、会社にいたころに、担当者として女性総合職向けのキャリア研修みたいなことをやったんですよ。そのときに、女性社員側からは厳しい言葉というか、そうやって女性向けとかいう時点でダメじゃんみたいな、その時点で既に差別なんだよって言われまして。サントリーでは、女性社員側からキャリア支援の要望が出てるってことですか?
- 山田:
- そうですね。やっぱりわりと若手の方で、これから迎える産休育休でキャリアが分断されちゃうんじゃないかって不安を持ってる人が多かったですね。松本さんの今の話に関しては、やっぱり会社側が女性向けに「研修やるぞ、出ろよ」っていうと、そう思う方もいると思うんですけど、自分たちにもこういうの必要だよねって下から上がってくる良さっていうんですかね、くくられたくない人は出なくてもいいし、本当に悩んでいる人は出ればいいしっていうところで組合がやるのもいいのかなと思うんですよね。
- 松本:
- 個別のテーマというか、ちょっと細かい所を拾っていけるのかな。確かに組合の方が小回りききやすいと思っていて、ただ話を聞いてあげるとか、今後のキャリアを考えるための話を聞くのにいい人を紹介するとか、そういうことはできる気もするなと思います。そうなったときに、会社と違って難しい点は、話を聞いた結果、何ができるわけじゃないというか、例えばその結果人事異動を配慮できるわけじゃない。そこが難しいと思うんです。
- 山田:
- それでいうと、グループにサントリーウェルネスという会社があるんですが、ウェルネスの人はウェルネスの中だけで異動する人が多くて、他のグループ会社で何やってるのかわからないとか、もっと幅を広げてキャリアを考えたいって時に、その会社から出て行った先輩社員を呼んで、違いってなんなのとか、ウェルネスで培った経験ってどう生きるのかみたいな座談会を支部でやってくれたりしたんですね。それは、小回りがきいたり自分たちで悩みを解決できる良さが出た事例かなと思います。それは営業でもやってみよう、地方営業も地方営業ならではの悩みがあるから、地方営業から事業部とかスタッフの方に行った先輩の話を聞いてみようみたいなのも結構広がってますね。
- 東海林:
- 人事異動みたいな外的要因には僕らは触れないんですけど、内的な動機にはアプローチできるんですよね。自分はこういうところ不安で、でもこういうときは生き生きできるとか、そのためにはこういう人の話聞いてみたいとか、そういうときどうやってあの人は乗り越えたんだろう、考えたんだろうっていう機会はアレンジできる。特に不安に感じる部分っていうのは、なかなか会社とのキャリア面談とかだと言いづらいところで、それを組合の支部なり本部なりがちょっと話を聞いて、機会を作ってあげることで寄り添えた、という部分かなとは思います。
- 松本:
- 昔に比べてキャリアに悩む人って多いんでしょうか?
- 小森:
- 生活様式が多様化していることは影響していると思いますね。共働き世帯も増えていて悩むことがたくさん増えている中で、一人一人の生活に寄り添ったキャリア支援を求められているのかなと。全然できてなかったという反省も一方であって、そういうキャリアを支援するような研修あるいは人と人との繋がりのコーディネートみたいなところは、参考にしていきたいですね。
- 東海林:
- あなたはこうでしょって決めつけられるのはすごく嫌がる人が多い、でもこういうのがあったら自分ジョインしますみたいな感じはあるかも。支部でレクやりましょうって言っても意外と集まらないんですけど、例えば社会貢献でゴミ拾いやりましょうみたいなのが逆に集まったりして、今までは集まって楽しく宴会やるのが組合だっていうのがありましたけど、集まってやることっていろいろあるんじゃないか、って組合員は思っているような気がしてます。
- 小森:
- それで言えば、先期は本部主導で近隣支部と初めてフードドライブに取り組みましたが、80kgくらいの食品が集まりました。それだけでなく、支部でレクができないから何かできないかなということで、独自にフードバンクに取り組んで、自分たちで3,40kgぐらい寄付したって支部もありましたね。ビジョンの中に「よりよい社会の実現」というのを掲げていて、フードロスを削減していかなきゃいけないよねってことに共感してくれてるところもあって、それは良かったなと思ってます。
- 東海林:
- 意外とそういう活動の方が響いたりするのかもしれないな。レクで同じ職場の人と仲良くするのは大事だけど、同じ時間使うなら、社会貢献の方がやりたいっていう人結構いるんだなと思いますね。組合活動全体に、何か新しい色ないと、現状維持は退化に等しい時代だよねって思っていて、新しい活動をしたいなっていうのは常に考えていきましょうって言ってます。
- 小森:
- それは本当に共感できます。どうしても前例主義、形式主義みたいなところもありますけど、組合員一人一人と真剣に向き合いながら変革していく、新しく生み出していくようなことも必要なんだろうなと思ってます。ビジョンや組織のあり方として示して、少しずつ変わってきてる感じもありますし、これからもっともっと変えていけるのかなと思ってます。
- 東海林:
- 会社は会社で一生懸命やるじゃないですか。だから組合に期待することって意外と会社もやってくれてるしみたいな、組合に頼らなくても大丈夫だよなみたいな人もいまは多いなとは思うので、新たな価値をつけていかなきゃいけない。
- 小森:
- 会社にできないことをやっていくっていうのはすごく大事なアプローチだと思います。たとえば、食品メーカーの使命として、フードバンク活動を組合で先行してできたことはすごい良かったと思っています。会社の中でもやりたいねって言ってる人も出てきていて、そういうふうにちょっと影響も広がっている。会社にできないこと、会社がやらないことをやるっていうのは組合としていいのかなと。それを見出すのが難しいんですけど(笑)
- 東海林:
- もともと「人間力」っていうキーワードで、少しでも自分らしい人間力をつけていこう、っていうことで、組合としてもそこにお金や時間をかけるよってやってきたんですけど、会社もビジネススキルを身につける研修ばかりやっていては駄目っていうことで、同じ方向性になってきて、組合と会社同じことやってないか、みたいな見え方が最近あるんですよね。
会社も、寺子屋っていうプラットフォームを作って、ビジネス関係ない、例えば茶道とか、お花の話、これはちょっと仕事よりですけどエクセルスキル、みたいにいろんなコンテンツをやっていますね。
- 山田:
- 自分の趣味を共有する、っていうことで「お城について学ぼう」みたいなのも、社員が自分が講師になってやりたいです、っていうので、企画を立ち上げてたりしますよね。
- 東海林:
- みんなで学ぶとかみんなでワイワイやるっていうのは、まさに組合がやってきたようなことで、それを会社がどんどんやってきている。組合のオリジナリティみたいなところが「人間力」っていうキーワードで一つあったんですけれども、段々なくなってきている。そこも進化させないといけないっていう話をしてますね。
- 小森:
- 目指すべき方向は同じ部分もあるんだろうなと思っていて、とはいっても違うアプローチの視点を見出していかないと、労働組合の存在意義が薄れていってしまうので、そこは考えていかないといけないですよね。
- 東海林:
- あとは、社外とのつながりは組合ならではですよね。アサヒビール、キリンビール、サッポロビールみたいなところともすごくフラットに意見交換できる。それから業界越えて交流できるところは組合ならではなのかなと。会社では多分しようと思っても、ビジネス絡んでくると難しいと思う。そこを抜きに話せたり、そういう機会があるのは組合ならではだなっていうのは思うけど、それが中々できないのがこのコロナ禍できついなと。
- 小森:
- 本部だけじゃなくて、支部も巻き込んでやるといいのかもしれないですね。外を見るっていうきっかけにもなりますし、ビジネスだとビジネスの話中心で外のことを知るって感じだと思いますけど、働き方も含めて、どういうことやってるんだろうとか、客観的に自分のキャリアを見つめ直すという意味でも大事かもしれない。そういう企画とかできるといいですよね、まぁWebだと難しいんですけど……。でもWebでも今、飲み会とかもできるツールがいろいろありますよね。
- 松本:
- Teamsで飲み会をやると、1人しか喋れないから大人数は難しい、じゃあ部屋を分けるとたまたま同じ部屋になった人とばかり話しちゃう、っていうのがあるじゃないですか。Remoっていうツールは、宴会場を上から見下ろしているような感じになっていて、自分で席を選んで移動できる。そのあともう少し探して、バーチャルオフィスのoViseっていうツールが飲み会にもうまく使えそうなので、今これとnonpiっていう飲食配送サービスを組み合わせて飲み会やろうとしてます。少し費用が高い傾向があるのでコスト見合いになっちゃいますけどね。
- 小森:
- デジタルっていうとドライな印象ですけど、みんなで同じ食事食べながら、っていう、ちょっとウェットな使い方もできてよかったですね。
- 東海林:
- そういうのを僕らで言うと、もう居酒屋でやる飲み会が最上だと、これしかないみたいな価値観でいるわけですよ。だから、Webはサブとして今しょうがなくやっているぐらいな。そういう新しいツールとか価値観とかやってみないとわかんないことって結構あるなと思います。
- 堀口・山田:
- うんうん。
- 東海林:
- 本当はね、飲み会のプロのはずなので(笑) こういうの聞いたらね、やらなきゃいけないなと(笑)
- 松本:
- いや~、でもやっぱり居酒屋で飲みたいですよね(笑)
- 小森:
- 間違いない!! 居酒屋で飲めないからこそのリモート。
- 松本:
- ちょっと居酒屋に近い体験がしたいなって気持ちでやってるところはあるんで。
- 小森:
- 0と1の間見つけたみたいな感じですね。
- 松本:
- そうですね。あ、時間もあと少しです。これまで「変わること」について話してきましたけど、最後に、逆に組合として「変わっちゃいけない」部分は何でしょう。
「1人1人の顔が思い浮かぶ」繋がりを忘れないでいよう
- 小森:
- IT化を進めても、人を大事にする、繋がりを大事にするみたいなところはなくちゃいけない、そういう価値観は変えたくない。関係性を深めていって、その上で労働条件一緒に上げていくみたいなことは、労働組合の原点で、大事なような気がします。
- 堀口:
- 今おっしゃっていましたけど、やっぱり現場との接点ですよね。今のやり方だと希薄になったところ、それが価値じゃないのかと。そういうものを持ち続けたいし、持たなきゃいけないというのは、今の環境だからこそ思いましたね。
- 山田:
- あの人はこういう人だったなって思い出しやすかったのは、リアルの時なのかなと思ってて。総合政策局で制度を考えるときも、この人だったらこう思うかなってすごく覚えてたのが、今はそこ弱くなってきてる。やっぱりそういう1人1人の顔を思い浮かべるっていうことは、環境変わっても人数変わっても変えちゃいけないことだし、どうやったらそれができるかなっていうのを考えていかないといけない。
- 山下:
- 変えてはいけないことは、サントリーさんと交友関係を続けるということですね。私はそう思っています。はい。
- 松本:
- トリなのにそれだけですか? もっとしゃべってください(笑)
- 山下:
- いや、本当に他労組から学ぶことって非常に多いって思います。私も本部に来て、全く違う世界だなと思って、それだけ他の会社の人たちと触れ合う機会ってなかったんですよね。いろんな価値観とか、取り組みを吸収できて、やりたいことがたくさん出てきたことも事実です。でもプラスばっかりしてっちゃうと、やることだらけになっていっちゃうので、どこかで引き算をしていかなきゃいけない。そのあたりを見極めながら今後も日清労組が少しずつでも成長できるよう、我々としても取り組んでいきたいなと思ってます。お力をまたお借りしたいなと思ってますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします。
- 東海林:
- はい、こちらこそよろしくお願いいたします。
以上
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