マルハニチロユニオン×日清製粉労働組合
マルハニチロユニオン様対談「アフターコロナ」に向けて
「働き方改革」はどうなった?
- 松本:
- 今日はよろしくお願いします。今回は、アフターコロナに向けてこれまで緊急対応してきたことをどう定着させるのか、というようなことからお話しできればと思います。当社では2017年ぐらいから「働き方改革」が言われるようになりましたが、コロナになって否応なく働き方が変わった結果、働き方改革って何だったっけみたいな感じに今ちょっとなっている気がしています。
- 白山:
- マルハニチロユニオンでは、広く働き方に関してちゃんと話し合える場所を持とうということで、組合発信で「めりはりのある働き方検討委員会」を会社側にもちかけて、年に1回程度開催しています。例えば物流部門では労使合同でアンケートをとって、会社での働き方について、管理職も組合員も、契約社員さんも、みんなで分析して、課題を抽出して、対策を考えるということもやっていました。コロナが来てうまくいかなくなった取り組みもありますけどね。
- 名古屋:
- 直近はコロナ関係で、在宅勤務手当についても話し合えたらなと思っていますね。
- 松本:
- なるほど。まさに僕らも2022春闘で在宅勤務手当を要求しました。その時は会社からは今の在宅勤務制度は緊急避難で運用しているから、制度自体をまず考えようって話があって、簡単に言うと在宅勤務制度を拡充して定着させましょうっていうのが今の会社の考え方なのかなって思っています。マルハニチロさんとしては在宅勤務自体は会社として推す方針ですか?
- 名古屋:
- 元々、多様な働き方を目指して在宅勤務をやっていこうという会社の考えがあって、2020年7月に、労使協議会で話し合って在宅勤務制度を導入しました。マルハニチロに関しては回数制限を設けない形で、上長が認めたら何回でも在宅勤務できる制度になっています。ただ、在宅勤務自体があくまでも自分のペースに合わせた働き方の選択肢の1つであるという考え方から、手当については考えていないと。なので、在宅勤務で光熱費の発生などがデメリットだと思った場合は会社に来て業務を行ってくださいというのが、基本的な会社の考え方ですね。
- 松本:
- 手当に関しては当社も同じ考えですね。世の中でも在宅勤務を推す会社は手当も出すし、あくまで選択肢としては認めるよっていう会社はそういう考えになりますよね。在宅勤務の組合員側の利用状況はいかがですか。
- 山本:
- 働き方としては、在宅勤務が始まったばかりの頃って、やっぱり在宅じゃできない仕事が結構あったんです。例えば、どうしても出社して捺印しなきゃいけないとか、FAXを受け取らないといけないから出社しますとか、そういう声をすごく聞いてたんですけど、それがだんだん職場の話し合いの中で、在宅勤務できる形に変えていったというのは、最近は結構聞くようになりました。もちろん残ってはいるんですけど、変わってきてるとは思いますね。それから、始まったころは、仕事とプライベートをうまく切り分けられませんという話も聞いてたんですが、最近はなくなりました。まだBCP対応の中ではあるんですけど、当たり前に在宅勤務をするようになってきて、上手く通常業務の中に在宅勤務を取り入れる人たちが、増えてきたのかなって感じます。
- 武井:
- 私、本当にコロナが増えてきたときは研究所にいたんです。研究は出社しないと進まないのに、在宅勤務を指示されて、自分の仕事は緊急時には不必要な仕事なのかってちょっと考え込むこともありました。結局在宅勤務しようとしても仕事を進められない人もいると思うんですが、そういった事例ってありましたか。
- 名古屋:
- 当社でも、工場勤務者とか物流の倉庫に勤務してる方で濃厚接触となって出社を控えている人たちとかは、在宅での仕事が限られるので、自主学習に励んでくださいと会社から言われていました。ただ、何をすればいいんだろうっていう問い合わせは結構当初ありましたね。
- 松本:
- 環境としてもモバイルPCを持ってないから、在宅しようとしてもできないという声はありますね。
- 名古屋:
- システム関連も進んだなという印象はあって、まだ工場勤務でパソコン持ってない人は対象外だったりするんですけど、スマートフォンを配ったりとか、パソコン環境を整えたりとかっていうのは一気に進んだなという印象ですよね。
- 松本:
- うちも本社地区では固定電話をなくしましたが、やっぱりそういうところで変わってきたんだなって実感しますよね。そういった点では、コロナ前の働き方改革と、コロナになってからの働き方改革って、延長線上にないような気がしているんですよね。
- 山本:
- 私としては根本的にはそんなに変わったとは思わなかったですけど、どうですか。
- 名古屋:
- 私もそうで、先ほど言った通り、道筋として、元々やろうとしてたことがコロナも相まって一気に進んだっていう感覚です。
- 山本:
- 実際に制度が導入されて、その中でどういう働き方をするかっていうのは、結局労働者が考えていかないといけない部分だと思ってます。制度が拡充されたから勝手に働きやすくなるかっていうと、やっぱりそうじゃないんだなっていうのは、実際現場の組合員さんと話をしていると、とても感じる部分ではありますね。
- 白山:
- 想定してなかった課題が浮き彫りになったとかは、結構コロナの影響を受けたんだなと思いますね。コミュニケーションの希薄化が、こんなに社会的に取り上げられるようになるとは思わなかったです。それに伴ってなのか、若手でメンタル不調とか、休むまで行かなかったとしても孤独を感じてしまうだとか、そういうことは想定以上に多かったように思います。
- 武井:
- 私あの時、一人暮らしのワンルームの六畳ぐらいの部屋に1ヶ月いて、本当にもうこの世の終わりかなと思いました(笑)。狭いスペースで外にも出ることできないし。誰とも本当に1日中喋らない。
- 名古屋:
- 特に1年目とか2年目とか、自分の仕事をあまり把握してないとかどう進めたらいいかわかんないというときに、多くの人が一人暮らしでメンタル不調になっちゃうということはあって、そこから会社としても施策を考えようという変化はありましたね。
- 山下:
- グループチャット作って毎日必ず投稿するとか、新入社員にはテレビ電話で電話するようにしてるとか、何とかそういったコミュニケーションを取らないといけないという意識にみんながなってきたことは、結果としていい変化だったのかもしれないなと思っています。
- 松本:
- 少し話戻りますが、働き方改革の目的って、「生産性向上」と「多様な働き方の実現」の二つがあると思います。コロナの前は生産性向上がメインだったと思うんですよね。それが今は多様な働き方を実現するためにいろいろやらないとってなった結果、生産性も向上しているみたいな方向性になってきてる気がします。その点が自分の中で感覚として少し変わった部分なんですよね。
- 名古屋:
- 確かに生産性の向上というよりかは、多様な働き方先行で露出が多いなっていうのは感じますね。
全員共通の正解がない時代
- 松本:
- そうなってくると、多様な働き方を実現しましょうってなったら、全員で同じことを目指せないんじゃないか、全員共通の正解、これだったら全員OKっていうものはなかなかない。そういう時代になってきたときに、僕らが労働条件を上げていこうとするあり方ってどうやっていけばいいんだろう、ということをずっと考えています。そういうところってどういう考えでやられてますか。
- 名古屋:
- すごく難しいところですね。在宅勤務やフレックスは、工場とか物流倉庫で働かれてる方って、職務上難しい。ただそこで働かれてる方たちも、多様な働き方の検討はしていかなきゃいけない、というところで、本当に悩んでいます。その職場でできる最大限の多様な働き方というのは何か、ということはやっぱり現場で働いてる方たちが一番わかると思うので、そこでいかに声を上げてもらうか。一方で、在宅勤務やフレックスができる職場に関して、進めていくこと自体はいいことだと思います。逆にそこが進んでいかなかったら、工場とか物流倉庫の人たちも取り入れることが難しいとは思うので、できるところからできることを探していこう、ということになりますよね。
- 名古屋:
- 突き詰めていくと、社会課題に繋がることも多いのかなとは思います。一番のボトルネックは結局なんなのか、ということを突き詰める努力はしているか。そこが解決されて社会課題の解決に繋がれば、広く、本当に誰でも生きやすい世の中に一歩近づけるよね、という発想が必要。その上で、人それぞれの好ましい解決策みたいなのは違ってくるので、解決方法は今後もっともっと多様になっていくんじゃないかな。我々よく最近よく発信する様にしていることなんですけど、労働組合って元々助け合いの精神で始まった組織なんだから、助けが必要な人をちゃんとみんなで助けに行こう、ということをなるべく多くの人に伝えていくことも大事だと思いますね。
- 山下:
- 我々は、いままで賃上げとか退職金とか、全員に恩恵あるものしか要求してこなかった。今年3月の春闘で10年ぶりに諸要求をやったときに、支部と意見交換する中で感じたのが、思ったよりもみんな自分のことじゃなくても、困ってる人がいるんだったらやるべきだっていう声も多かった。すごくそこは安心できた部分もありますね。
- 武井:
- 確かに、工場と研究所と本社、営業とか、全然仕事の内容が違うので、要望も違うものが挙がってくるのは当然だし、何か要求するにしても、なんとなくどこかだけじゃない方がいいのかなって支部側から思ってはいました。
- 松本:
- さっき白山さんがおっしゃったことですが、具体的に表面に出てきている要望、例えば何とか手当が欲しいみたいなことの場合、結局会社もそれに対してイエスかノーか、という話で表面的なやり取りになってしまう。そもそも何が課題なのか、ボトルネックは何か、ということを探して、その課題について話し合う中で解決策が生まれる、というやり方が時間がかかっても前進に繋がるのではないかな、と感じています。
- 名古屋:
- 我々は前々から春闘は賃金引き上げと一時金の交渉の場である、ということを会社と決めています。その他の制度改定だとかに関しては、通年の労使協議の中で行うという部分を、完全に棲み分けていますね。春闘だと会社側もやっぱり2~3週間で回答を出さざるを得ないので難しいですね。
- 山本:
- 1年以上続ける協議もありますし、必ずしも要求通りに通らないものもありますが、かなり時間をかけてしっかり話し合うという形ですね。
- 松本:
- テーマ別に協議をするんですか。それとも定例の協議があって、その中で話し合いをしているんですか。
- 名古屋:
- 会社・組合それぞれから申し入れ、定例ではなく必要に応じて案件ごとに同時並行的に労使協議をやっていますね。四つ五つとか、同時にやることもあります。
- 山本:
- 必ず職場に共有して職場の意見を集めて、それを踏まえた上でどういう判断をするのかを中執で議論をするっていうのを全ての協議において漏れなくやっています。本当にどんな小さな変化のものでも必ず職場の意見を集約して、これは組合としての総意になるかって、合意ができるのか了解でき
- 名古屋:
- 同時進行するときは結構大変ですよね。
- 松本:
- 本当に大変ですよね。すごいと思います。うちの場合は、定例の労使協議会の中で結構長めに時間取ってくれているので、まずはその中から始めていくつもりでいますね。
- 白山:
- 総意を築かなきゃいけない、ということは大会にかけなきゃいけないってなると、組合からの申し入れは時間かかりますね。
- 松本:
- 僕は会社では人事関係の仕事をしていたので、会社の制度を変えようとすると大変なんですけど、意思決定の機会は取締役会で、月2回ある。それでも遅いと思っていたのに、組合に来ると年に2回しかない。最初は衝撃でした。
- 白山:
- 会社だけじゃなくて組合員も効率だとかスピードだとか求める世の中で、組合は腰が重い、時間がかかるみたいなイメージになってしまいがちかなと思います。組合員の皆さんに正しく理解をしてもらいたいことは、全員の総意になって初めて会社と対等に話し合えるわけだから、全員で意思決定ができる場所が限られているというところでしょうか。
- 松本:
- 一方で昔は組合がやっていたようなことを会社がやるようになっている時代になっていますよね。部門別で交流会やろう、とか。
- 白山:
- 当社も全く同じ傾向があるから、トレンドなんだとは思います。だからこそ、会社がやってくれるなら嬉しいなっていう気持ちですね、どちらかというと。もっとやりたいことは我々もあったから、そっちに手まわせるな、と。
- 山本:
- 同じことやっていても、やっぱり組合と会社では組合員の受け取り方が違う。会社に寄せられている声と、私たちが持ってる声が全然違うということは何度もあります。だから、同じことでも私達だから見えることとか言えることもたくさんあると思います。集めた声をどの場面で伝えるのがベストなのか、ということは私達も悩んでいて、適切なところで、適切な伝え方をする。それが我々として必要なんですけど、組合専従歴5年になりますが、まだまだ悩みながらやってる部分ではありますね。
- 松本:
- 多様性の話を先ほどしましたが、「多様性」といって一番最初に来るのは男性、女性の話ですよね。我々の業界を見渡すと、これは食品メーカーの中でも会社ごとにちょっと違いますが、我々製粉業界というのは、ものすごく男性社会です。例えば組合で見てみると製粉部会って全員男性なんですよね。日清製粉労組本部でも女性は久しぶりで、もう一人女性がいますが、2人入ったのは史上初らしいんですよね。
- 白山:
- すご~い!
- 松本:
- ほんとに「すご~い!」って感じなんですよ。
- 武井:
- そういう文化ですよね。
- 松本:
- よくマルハニチロさんの所属する水産冷食部会は女性の役員が多いと言われます。割合でいえば、我々の会社にも女性はそれなりにいるはずなのですが、なかなか組合役員に入ってきづらい、来れない部分がある。多分武井も声かけられた時迷ったと思うんですよね。
- 武井:
- そうですね。
- 松本:
- 同じように声かけたとしても、男性が迷う理由と女性が迷う理由は違う気がしています。何が水冷部会の単組と違うのか、ということは気になるところです。お2人がなんで専従役員をやってもいいかなって気持ちになったか、お聞きしてもいいですか。
- 白山:
- 当社の男女比率は7対3くらいで、割と食品業界ではよく聞く割合ですね。私は、支部役員2年目の時にお声がけいただいて、会社のキャリアを中断する気がなかったので、最初はそんなに興味もなかった。でも「今年駄目でも来年また誘いに来るから」みたいにすごい熱心に誘ってくれて、その翌年に本当にまた誘ってくれたので、やることにしました。1回お断りをした直後の全国大会では、当時の女性の副委員長が退任して、次の年の本部は男性だけになりました。そのときに本部に対してある支部が、支部は本当に苦労して女性がいなきゃ駄目だと思ってやってるのに、本部では女性がいなくなるってどういうことだ、みたいな質問がかなり熱くされていて、それを見て考えさせられました。女性っていう属性がこんなに求められるものなんだ、必要なんだなと実感して、支部活動する中でこの相談ってもしかして私が女性だからこの組合員さんは相談しに来てくれているのかな、という機会が意外と多かったなと。それで翌年お誘いがあってOKしました。ただ当時独身だったし、30歳前後のころだったので、これから子供が授かったら、みんなの代表なのに産休育休とか取っていいんだろうか、とは当然考えたんです。その当時の委員長は、何も心配するなと、それはわかったうえで女性という属性を持ってるあなたを誘っていますと明言してくれた。それが大きかったですね。そういうエピソードがあったかな。私はそんな感じで、そんな私が誘ったのが山本さんです。
- 山本:
- 私は正直なところ、皆さんに披露できるほどのエピソードがあるかって言ったら決してなくて、普通に女性がやることに何の違和感もなかったですよね。本当に、なんで引き受けたのって言われたら、やってみようと思ったからですってだけで。それが人の役に立つんであれば引き受けようと。特にキャリアのこともそんなに思ってはなかったです。ただ、その時に心配ないよと言ってもらったんですよね。多分白山さんご自身が経験されたことで不安だったことを先に言ってくれていたので、あまり不安もなかったです。ただ、女性が2人というのは初めてだったみたいで、やっぱり周りからはそのことを注目された。そうなると、私は自分ではそう思ってなかったけど、女性として呼ばれて、女性として入ったんだと。女性として何かやらなければ、女性として何か言わなきゃみたいな、勝手に女性の代表としてしか私はここに存在意義がないんじゃないかって途中から思い始めたんですよ。だから、これ私女性として何かできてないぞみたいに思って、すごく不安になった時期とかもあったんですよ。人の役に立ちたいと思ったのにそうなっていない、みたいな。なので私は、どちらかというと入るまでの不安よりも入ってからの不安の方が圧倒的に多かったです。もう一つは、私が配属された部署(業務用の営業)には、本当に女性があまりいなくて、自分の中でのキャリアモデルっていうのが正直あまり描けてなかったんですよ。私の上は課長の女性で、真ん中が全くいなくて、新入社員に配属されたときは全国で女性が1人みたいな状態だった。すぐ上に女性がいるっていう世界の方が経験してなかったので、どっちかというと組合の方が違和感なくいったかもしれません。多分悩み、不安については、私と委員長だと違ったのかなと思います。
- 白山:
- 面白いね。
- 山本:
- そうなんです。特に私にとって白山さんはやっぱり憧れで尊敬してる、勝手に超えられないものと思ってしまっている部分はあって、女性がいると女性の人だけに目線を向けて、そこを目指しちゃいがちなんだなって思ったんですよ。でも決して目指す先って女性の上の人だけじゃないと思うんです。いろんなやり方があって、こう振り返っていろいろ考えたりすると、私自身すっごい偏っていろんなものを見ていたなっていうことを、振り返って思います。今やることも別に女性だからやるわけじゃないし、目指す先も決して女性としてのあり方ではないはずだし、でも女性としての特有のものもあるはあるので、それを自分も受け入れてほしいし、みんなのも受け入れてあげたいしっていうふうに思うように今はなっていますね。
- 白山:
- 今ちょっと山本さんが話した中で触れておきたいなって思ったのが、入ってから女性として何か言わなきゃいけないとか、取り組まなきゃいけないみたいなのを入った後に感じた。それを聞いて、やっぱりフード連合でも1人じゃなくて、複数人だとか、3割を超えないとやっぱ組織の性質だとか行動の変容に繋がらない、という話が出ているので、今回日清さんに1人じゃなくて2人入ったということは良い効果を生めるところにすごく近づいているんだろうなと思います。私がもといた水産畑はそれこそ男性社会だったので、あまり気にはしていなかったんです。だけど、こういう組織運営をしていく中では1人じゃ駄目だ、2人以上か、半々は目指したいなという気持ちはあって、当時の委員長に相談しましたね。女性活躍とか、女性の意見を、というときは1人じゃなくて、2人以上複数人っていうのは、私は今後も大事にしていきたい。
- 山本:
- 自分の中では同じ女性の立場というよりも、私の上に立つ人としての女性っていうふうな感覚で見ちゃっていた部分が当時はあったと思うんです。属性は一緒なんですけど立場が違うことで違うように勝手に感じしてしまうっていうのもあったりはする。でも、その反面やっぱりいることいないことで大きく違う。いなかったら私入ってなかったかもしれないですし。
- 名古屋:
- 組合員さんも本部専従として見てるっていうだけなんですよね、多分。ただ、それも普通にいるっていうことがずっと続いているから、そういう風土になっていると思うので、やっぱり「普通にいる」っていうことが難しいですけど大事なんでしょうね。
- 松本:
- 間違いなくそうですよね。その属性の人が珍しいから話題になる。男女だけじゃなくて、実際私も本社部門から専従になる人は初めてだったし、今回書記次長も工学系からは初めて専従になりました。だから珍しいね、って言われることもあります。
- 名古屋:
- 誰でもやっぱり委員長にもなれるし、選挙で選ばれたらなれるっていうだけだから、男性じゃなきゃ、とか特定の職種じゃなきゃいけない、ってことはないですよね。
- 武井:
- 中央執行委員をお受けしようかと思ってますって職場の上司に相談したときも、全くそういうことを考えたこともなかった人たちばかりなので、あれって営業の人がやるもんじゃないのみたいに言われたこともありますね。
- 松本:
- 武井さんは最終的には、まぁやるかって思ったわけですけど、そう思うまでの過程を教えてくれますか。
- 武井:
- 迷った理由は、先ほど白山委員長がおっしゃってたように、ちょうど結婚とかを考えてた時期で、任期の途中でもし産休とかでちゃんと全うできない可能性があるってわかっているのに受けるのはどうなのかな、って悩んでました。でも、任期を全うできないかもしれないって松本さんに相談したら、産休とか育休とか全然取っていい、なんなら取ってほしいぐらいのことを言ってもらったので、じゃあっていうところはあります。あとは職場の理解が得られるかっていうのがあって、開発系から本当にいなかったので、ちょっと心配があったんですが、うちの上司が結構フランクな人なので、わかんないけどやればみたいな感じで言ってくれたから、という感じですかね。わかってないからこそ言ったのかもしれないけど(笑)
- 松本:
- やらせてみたらそんなに大変なのってなるかな。
- 武井:
- ちょっと思っているかもしれないですね。でも、結構開発グループって忙しいところも多くて、今まで参加しない風潮が当たり前になっているけど、それもちょっとやだな、と。どこかで開発系の意見とか見方とかって入れていかないと、きっとこの先もずっと出てこないし、誰かが最初にやらないとずっと開発の目線って入らないんだろうなって思っていたので、それなら自分がやってみようかなって思いました。
- 名古屋:
- 逆にいろんな属性の人がいないと本当に組合員のその部署の気持ちわかってるのっていう声の方が出てくるかもしれませんよね。
- 山本:
- 絶対にいなければいけないわけでもないんですけどね。陰で支えてくれる組合員さんっていっぱいいる。組合役員OBの方たちもいっぱいいますし、アドバイスくれる方もたくさんいますし。それを踏まえて、自分たちは今どうするっていうのは考えていくことになるんですけど、そういう方たちの存在ってかなり大きいとは思います。
- 松本:
- 有難いですよね。開発や工場の管理者には組合の経験者が少なくて、そうなると、若手のうちに労務関係のことに興味を持ったことのある、ジブンゴトにしたことがある人は少なくて、管理職になったから労務管理をしなきゃ、36協定ってなんだみたいな感じの人も少なからずいるように感じます。それでは職場環境良くならないなと。やっぱり組合やったことある人とない人で全然違うというか、僕は人事・労務の仕事をしていたときに、同じ部長なのになんでこんなに理解度が違うんだろうと思ったら、組合経験者かどうかだったりして、組合の人材育成効果を感じていたので、今回今まで少なかった部門から来てくれてよかったなと思っています。
- 山下:
- 確かに、現場から見ていてもそう感じることはあるね。
- 松本:
- 組合の多様化の話をしてきましたが、会社のほうではどうでしょうか。
- 名古屋:
- 会社としては、人事部の中にダイバーシティ室を設けていますね。まずは男女の部分のバイアスをなくそう、特に育児に関するアンコンシャスバイアスを取っ払いたい、という理解促進セミナーは結構頻度高く、何年もやっていますね。
- 松本:
- 男性が今まで女性がしてきたと思われることに参加していることが、特別に見られている、みたいなこと当たり前化するという方向性ですね。
- 名古屋:
- あとは、管理職の人たちや職場の仲間で一緒に理解を深めながら、例えば育休や時短っていう人がいたとしても、一緒に協力しながら働こうよっていう風土を作っていきたいっていうことですね。
- 山本:
- 世代によって全然受け取り方に差があって、やっぱりそういう状況を経験してきてない方たちが上にいる。私達の年代になった場合、わりと子育てって2人でするもんだよねって感覚の方が圧倒的に多くて、旦那さんも当たり前に、特別ではなく当たり前に育児に協力している。
- 名古屋:
- 社会的なものだと思うんですよね。日本っていう国の、昭和の時代で24時間働かなきゃいけないよねっていう環境の中で、育児は女性がするものみたいな固定概念があって、やっとそういう部分がちょっと緩和されて今に至っていて、まだ過渡期というか。だからもう完全に女性としてずっと働き続けるっていうことを成立させるためには、男性も働きながら一緒に育児をやっていくことが必要不可欠なので、上司の女性に向ける目線だけじゃなくて、男性部下に向ける目線も同時に変えていかないと成立しない。
- 松本:
- 同じ目線で見なきゃ駄目だってことですよね。男性とか女性っていうより。最近男性の育休も長期で取る人が出てきましたよね。いまは話題になるので、まだまだなんだろうなとは思いますけど、そもそも気にならないというか、あいつもとってんな、お前いつとるの?ぐらいの話になってくれば、全然変わってくるだろうなと思いますね。
- 名古屋:
- 育休も1つの見方の指標ですし、保育園に預け始めてからが本番と考えると、お互いに分担しながらやってくっていう期間の方が正直長い。そこがやっぱり、お互いに働き続けられる条件なのかなって思いますね。やっぱり費用面もあると思うので、共働きをするとなると、収入は上がるかもしれないけど、保育園代とかっていうのがかかってきて、そこの負担も考えてどちらがやめちゃうというようなこともあるので、本当社会と一緒になって、環境を整えていくしかないのかなっていう、この課題に関しては。
- 松本:
- 働き続けるってなかなか大変ですよね。当たり前だと思ってたけど。
- 白山:
- 育児に関するそういう社会的なその体制が整っていくと、今度比較的女性が辞める理由の中で残ってくるのは転勤ですよね。配偶者の転勤も含めて。大きいのは結婚、出産・育児、配偶者の転勤かなって私の中では思う。いま、うちはジョブリターンで辞めてから10年間は登録しておけば帰ってこられる制度があって、簡単に辞められちゃうみたいなところにならないといいなっていう懸念もありますけど、制度を使って戻ってくる社員もちょっとずつ出てきています。今後そういったところも気にしながら見ていきたいですね。
- 松本:
- うちにもジョブリターンに近い制度はありますね。そもそも戻ってきたい会社じゃないにならないといけないですが。
- 白山:
- そう思います。帰りたい会社になりたい。
- 山下:
- 最終的にはその人の人生が幸せであればいいですよね。苦しい思いして勤めて欲しくもないし。自分だけがよければいいじゃなくて、1人1人がだれかのために行動できるように、それが本当に良い職場、良い会社を作ることになると思っているので、そういう組織に私たちの労働組合をしていきたいですね。本日はありがとうございました。